研究概要 |
本課題は,泥質堆積物のテフラ分析(火山ガラス屈折率測定等)である.当初の計画では,濃尾平野内の地盤沈下観測井に保管されているボーリング・コアを分析する予定であった.しかし,大学の予算でオールコア・ボーリングを実施できたので,このコアの一部を分析した.このボーリング・サイトは濃尾平野臨海部(鍋田干拓地)に位置し,地表面の標高は約-1m,掘削長は約63mで,軟弱な沖積層,第一礫層(沖積層基底礫層)を掘り抜き,熱田層下部に達している. このボーリングでは,南陽層(沖積層),濃尾層,第一礫層(沖積層基底礫層),熱田層下部が認められ,それぞれの基底面の深度は,南陽層が約40m,濃尾層が約50m,第一礫層は約60m,そしてこれ以深が熱田層下部である.南陽層は深度約10m以浅が砂層,以深は海成粘土層である.濃尾層は上半部が砂層,下半部は主に泥層(非海成)からなる.第一礫層は礫層である.熱田層下部は海成粘土層からなる. 深度63~39mの泥質コアは,平成22年度の補助金で分析しているので,23年度はこれより上位で,深度39~29mの南陽層下部にあたる海成粘土層を20cm間隔で50試料を分析した(補助金19試料,大学予算31試料).現在,22年度の結果をも含めて解析中であるが,以下の広域テフラを検出している可能性がある.1)深度34~35m付近(南陽層下部の海成粘土層);K-Ah(鬼界アカホヤテフラ;約0.7万年前) 2)深度38~39m付近(南陽層基底部の海成粘土層);U-Oki(欝稜隠岐テフラ:約1.1万年前) 3)深度44~46m付近(濃尾層中部の泥層);AT(姶良Tnテフラ:約3万年前) 4)深度60~62m付近(熱田層下部の海成粘土層);Aso-3(阿蘇3テフラ:12~13万年前) 広域テフラの確認のために,引き続き,解析中である. 濃尾平野において,1本のボーリングから広域テフラを数多く検出できる可能性が生まれたことは,ある程度,満足できる結果と言える.まだ分析されていないさらに上位の海成粘土層からも広域テフラの検出が期待できる.年代が明白な広域テフラを数多く検出できれば,軟弱地盤である沖積層に多くの時間面を挿入することができ,各層準(上下方向の各部分)の年代,堆積過程,および地盤工学的特性などの解析が可能となり,(巨大)地震の際に注意すべき点を指摘できることが期待される.
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