研究概要 |
本研究は,縞状珪藻土層に挟在される重力流堆積物を対象として,その3次元分布や堆積過程の解明,そして縞状珪藻土の年縞および珪藻化石から推定される湖の環境変化との関係を明らかにすることを目的としている.平成21年度は,主として(1)縞状珪藻土の分布する採掘場内全体の概要の把握,(2)珪藻化石試料の採取を目的とした調査・研究を行った. (1)では,野外観察とはぎ取り試料を基に,重力流堆積物を認定し,堆積構造,含有物等から重力流堆積物の分類を行った.その結果,認定した重力流堆積物は,以下のように大きく2分されることが分かった.(i)タイプB:破損した珪藻のブロックを含む灰色の堆積物で,層厚は相対的に厚い.側方への連続性はあまりよくなく,尖滅することもある.(ii)タイプC:黒色のシルト質な堆積物で,層厚は比較的薄い.側方へよく連続し,侵食作用のない塊状構造を示す場合が多い.タイプCは,河川性の珪藻種Tabellaria fenestrataを含む.タイプBとCはそれぞれ,河川性の珪藻種,内部侵食面の有無に基づいて,湖底の斜面崩壊からの堆積物と周囲の河川から排出されるハイパーピクナルフローからの堆積物と解釈できる.一般のタービダイトサクセッションでは,このように容易に重力流堆積物を分類することは出来ず,これらの側方変化や層相変化の情報は非常に重要である. (2)では,層序学的に連続して珪藻化石を観察するために,1インチ四方の帯磁率測定用のポリカーボネイト製キューブで珪藻土を採取した.旧採掘場にて1セクション170試料,現採掘場にて1セクション318試料を採取した.これまでに,それぞれ顕微鏡観察用のスライドと走査型電子顕微鏡用のフィルターを作製した.1試料に数枚から十数枚のラミナを含んでいるので,数年から十数年を代表する珪藻群集組成が明らかになる予定である. 今後は上記の作業結果を統合し,解析してゆく予定である.
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