研究概要 |
本年度は,(1)湖成重力流堆積物の層厚特性,(2)重力流堆積物と基底侵食構造,(3)珪藻化石の群集組成解析,(4)重力流堆積物の逆解析手法の基礎研究を行った. (1)では,洪水流と崩壊起源の堆積物の層厚頻度分布が,前者がべき乗則分布に後者が対数正規分布に近似できることを明らかにした.イベント堆積物の規模を考察する上での基礎的な情報となる.(2)では,重力流堆積物の基底侵食構造が形成した流れの種類によって異なることを明らかにした.(3)では,連続試料の珪藻化石群集組成が4つに分けられることを明らかにした.下位より,(1)Puncticulata属が優占,(2)Stephanodiscus属のみが優占,(3)一部Discostella属が多く底生珪藻が多産,(4)Stephanodiscus属とCyclostephanos属が共存する層準である.全層準で認められるStephanodiscus属の殻サイズは他の珪藻種が多産する時に大きくなり,単独で優占するときに小さくなる傾向が明らかになった.このような珪藻群集組成や殻サイズの変化には洪水起源の重力流堆積物が影響している可能性が示唆される.つまり,古蒜山原湖における珪藻群集の遷移には洪水の影響が重要であったことが指摘される.(4)では,湖成タービダイトから古水理条件を読み取るため,数値計算に基づくタービダイト逆解析の基礎研究を行った.湖底の状況を踏まえ,常流の混濁流に関する逆解析を検討した結果,射流の場合に比べて数値発散を抑えることが逆解析の大きな課題であることが明らかになった.同様に細粒堆積物を取り扱う際には,堆積物連行関数の精度も問題となる.これらの課題の解決策として,数値発散を防ぐためにリチャードソン数を固定するように計算初期値を選択するグリッドを開発した.また,泥質堆積物の連行関数について文献調査を行い,従来のものよりも適切な関数をモデルに組み込んだ.
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