研究概要 |
本研究の目的は,国の機関や地方自治体から地盤調査用の地質試料を提供してもらい、珪藻、花粉、火山灰、粒度の分析、放射性炭素年代測定により札幌市周辺(石狩平野)の軟弱地盤の層序や古環境、低地の発達過程などを解明し、地盤図作成や地震防災などに寄与することである. 研究期間は2009~2011年度で,2009年度は既存掘削井(地質研究所;2井,札幌土木現業所;7井,札幌市下水道河川部;1井)の地質試料を収集し,この内の地質研究所の2井と札幌市下水道河川部の1井について珪藻・花粉・火山灰・粒度分析および放射性炭素年代測定を行った.成果の公表は,口頭発表4件と地質学雑誌(査読有・第116巻)である. 特に,地質学雑誌掲載の論文では,1万年~8,000年前の石狩平野では現在の海岸線より更に沖合に外洋と汽水湖を隔てる沿岸砂州が存在し,縄文海進に伴う海水は容易に陸域へ流入出来なかったことを明らかにした.また,石狩平野の南西側では,地下22~33mに11.3万年前に降灰した洞爺火山灰が存在し,その直下には最終間氷期(約12万年前)に形成された堆積目面が認められた.これは,現在の沖積面に匹敵するもので,約11万年前においても約6,000年前と同じ様に,温暖化に伴う海進により地層(沖積層)が形成されたと推定される.また,汽水的環境を示す堆積物は現在の海岸線より33km内陸にも存在し,縄文海進高頂期(約6,000年前)には東西30km,南北20km規模の汽水湖(古石狩湖)が広がっていたことが想像される. 以上の様に,珪藻や火山灰等の分析や放射性炭素年代測定を行うことにより,多くの地質現象が明らかになり,石狩平野の生い立ちを明らかにする上で有用な資料を得ることが出来た.
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