研究課題/領域番号 |
21540481
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小竹 信宏 千葉大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00205402)
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キーワード | 層位・古生物 / 生痕化石 / 大量絶滅 / 環境激変イベント / 底生動物 |
研究概要 |
本研究では、現生生物を対象とした研究からは決して得ることができない、海底の物理・化学環境の激変で形成された無生物状態の海底環境に底生動物が参入し新たな群集が再生・回復・発展するプロセスを、生痕化石の検討に基づいて底生動物の生態学的・行動学的変遷過程をより長いタイムスパンのもとで検討・把握という観点から解明を試みる。その際、環境激変イベント後に形成・誕生した無生物海底に新規参入した底生動物によって形成された群集回復期生痕化石を正確に識別し産状を詳細に検討することで、形成者の海底への参入順序を復元する。これらの基礎データに基づき、底生動物が無生物の海底環境に参入し、異なる生活形態のステージを経て新たな群集が形成されていくプロセスを、質的に異なる堆積イベントと環境に応じて比較検討するとともに、総括することを目指す。このような研究は、欧米では地質学的条件が整わないこともあり遂行が難しく、本研究による成果が欧米研究者へ新たなインパクトを与えることをも目指している。本年度は、タービダイト相に焦点を絞り研究を行った。その結果、徳島県東部の和泉層群と宮崎県南部の日南層群における調査で、新たな事実を発見するとともに、質の高い大量の生痕化石サンプルと生痕化石の産状等で膨大な基礎データの蓄積ができた。これらは、本研究目的達成に大きく貢献することは間違いなく、欧米研究者の「常識」を大きく覆すに足る価値がある。ただ、本年度は天候不順と代表者が所属機関の管理職にあったため、予定よりも野外調査が十分にできなかった。また、管理職業務遂行を優先しなければならなかったため時間的余裕が足りず、執筆途中の複数の論文も完成・投稿までには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度は例年に無い天候不順で、本研究遂行に欠かせない野外調査が充分にできなかった。それに加えて、代表者が所属機関の管理職にあったため、想定以上に本務に拘束され、当初予定よりも野外調査に十分な時間が割けなかった。論文執筆も最終段階まで完成していながら、最後の推敲ができず、投稿に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、本研究の最終年度にあたる。本来であればデータの解析とまとめの最終段階にあり、国際誌等に成果を公表する執筆活動が主体となる。しかし、上記で述べた事由により、研究の進捗状況は遅れている。したがって、24年度は、昨年度遂行できなかった野外調査のなかで、成果が期待でき、重要と判断される調査(宮崎県串間市の都井層群)あるいはどうしても追加調査が必要なもの(徳島県和泉層群、宮崎県日南層群、鹿児島県屋久島熊毛層群)に時間と経費を絞り、データ取得も同時並行的に行う。また、もう一歩で投稿できる複数の原稿を完成させて国内外の査読誌に成果を論文として投稿する。
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