研究概要 |
ニュージーランド北島のアローロックスには,世界でほぼ唯一,三畳紀最前期の層状チャート層が露出している.本年の研究は,平成20年度の兵庫教育大学学内科研費による,21年3月の現地調査で採取した資料を中心に研究を進めた.これらは三畳紀前期のDienerian期からSmithian期に及ぶ約150層準の試料である.放散虫化石を含む層準は多くあるものの,ほとんどの試料は再結晶化が進んでいる.各試料とも3回以上フッ酸による処理を行っているが,現在のところ同定可能な放散虫化石が得られたのは,Dienerian期の2,3試料である.これらの群集も保存は良好とは言い難いが,Oruatemanua属のほか,Entactinia属,Entactinosphaera,属と思われる放散虫化石を含んでいる.現在,このDienerian期の群集について,特にEntactinia属の分類学的検討を進めている.現在のところ,Dienerian期のEntactinia属には数種が認められるようであり,古生代末のペルム紀後期からのこの属の変遷を考察できる可能性がある. 21年度末の22年3月には,従来から共に調査を行っている宇都宮大学の相田教授,愛媛大学の堀准教授,宮崎大学の山北准教授らと共に,アローロックス,及びオークランド近傍での調査を行った.今回の調査でもアローロックスの波打ち際に三畳紀最前期のチャート層であるARFセクションがよく露出し,Griesbachianの放散虫が報告されているARHセクションと共に,約70層準で試料を採取した.船便で送付した試料は無事日本に到着し,今年度はまずこれらの試料の処理を進めていく予定である. また昨年度にはO'Doghertyら欧米の研究者と共に,三畳紀放散虫化石属のカタログを公表した.
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