研究概要 |
平成22年度も昨年に引き続き,世界的にほとんど報告のない三畳紀最前期の放散虫群集を解析するため,ニュージーランド北島アローロックスの試料をもとに研究を進めた.まず,平成22年3月に現地で採取した,三畳紀最前期の約60層準のチャート試料をフッ化水素酸を用いて処理し,放散虫化石の抽出を行った.その結果,以前に採取していた試料とあわせ,10層準以上から比較的保存良好な放散虫化石群集を得ることができた.これらの放散虫化石について走査型電子顕微鏡による写真撮影を行い,分類学的検討を加えた.その結果,従来世界的にほとんど報告のなかったDienerian期の群集に,Entactinia属,Copicyntra属などのEntactinaria目の放散虫化石を識別している.また,Latentifistularia目としてはTakemura and Aono(1997)によるOruatemanua属が認められたが,三畳系最下部であるGriesbachian階から産出したCauletella属やQuadriremis属はほとんど産出していない.さらにDienerian期中頃からは,Kamata et al.(1997)の報告に類似したNassellariaが出現しており,三畳紀最前期には漸移的に放散虫群集が変化してきたことが明らかとなった. これらの結果は予察的に大学院生とともに古生物学会例会で発表したが,今後これら放散虫の分類学的考察を進め,記載を行っていく予定である.また同じくニュージーランド北島からの三畳紀最前期放散虫について,愛媛大の堀准教授らとの共同研究も進行中である.なお,平成23年度末には,本研究の上位にあたるアローロックスのDienerian期後期からSmithian期のチャート層について試料採取を行った.未だ世界的に報告のないこれらの年代について,放散虫化石の抽出を試みたい.
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