研究概要 |
平成23年度は前年度に引き続き,ニュージーランド北島アローロックスの試料をもとに研究を行った.三畳紀の最前期であるInduan期の放散虫化石が連続的に産出するのは,世界中でもアローロックスのみで,現在のところ十数層準から放散虫群集を得ている.昨年度と今年度の研究で,これらの試料からの放散虫化石の走査型電子顕微鏡による観察をほぼ終え,Induan期に15属40種以上の放散虫化石を識別することができた。その結果はこれまでの観察通り,Induan期の放散虫群集の大多数はEntactinaria目,Latentifistularia目,Albaillellaria目の古生代型放散虫で,中生代型のNassellaria目も少数出現してくるということが判明した.これらの放散虫については,特にEntactinaria目のCopicyntra属,Cipicyntroides属などについて記載論文を投稿準備中で,昨年度にオーストラリアで開催された石炭紀・ペルム紀国際会議や日本地質学会において発表を行った.これらInduan期の放散虫群集については,その群集組成により3つの化石帯に分帯が可能である.それらは,ほとんどがペルム紀の種からなるGriesbachian階の群集,Oruatemanua属が特徴的に出現する主にDienerian階下部の群集,そしてNassellariaなどが出現するDienerian階中部の群集である.これらの群集は漸移的にその種構成が変化することから,古生代の放散虫類の多くが少なくとも南半球では中生代最前期にまで生き延び,徐々に群集が変わっていったことを示している.また,Induan期の古生代型の放散虫種は,Olenekian後期までにはほとんどが絶滅したと考えられる.これらの内容は,昨年度にスペインで開催されたInterRadや愛媛大学での放散虫研究集会で発表した.また,愛媛大学の堀准教授らとの共同研究で,ニュージーランド北島のワイヘケ島からInduan期前期のNassellaria目が見いだされ,Hori et al.(2011)で報告した.
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