研究概要 |
上部石炭系(ペンシルバニア亜系)は現在,一般に4つの階に区分されるが,下限の定義や境界模式地(GSSP)が決定しているのは未だBashkirianのみである.本研究は,上部石炭系を構成する3つの階,Moscovian, Kasimovian, Gzhelian基底の境界模式地策定のためのフズリナ生層序及びサイクロセム対比に関する研究を,2012年に計画されている境界模式地最終提案の提出に向けて完成させることにある. 本年度は,当初の研究計画に従い,以下の地域での野外調査と,そこで得られた試料の処理を行った.まずウクライナ,ドネツ炭田地域では,これまでの予察的な先行研究で上部石炭系各階の境界の検討可能性が明らかにされたMalo-Nikoraevka, Zlotaya, Gurkova, Khartsyzskaya, Soroch'aの各セクションでの調査と試料採集を行った.南部中国では,貴州南部の納水,洞甲村,雅水,店子上セクションで,また広西北西部の徳保,南丹地域において調査を行いプラットフォーム浅海相,縁辺相,斜面相での岩相柱状図作成と試料採取を行った.本邦秋吉石灰岩では,Bashkihan~Gzhelian相当層が連続してみられる佐山真名ヶ岳地域において連続的に密な試料採集が可能なセクションの選定を進めた.これらの調査で得られた試料について,現在処理を進めている. また今年度は,ロシア,モスクワ盆地および南部ウラル地域で開催された石炭系層序委員会フィールドミーティングに参加し,Kasimovian基底およびGzhelian基底の境界策定の現状について口頭発表した.この会合では,両地域においてKasimovian基底およびGzhelian基底の境界模式候補に挙げられた幾つかのセクションを共同調査し,境界検討に重要な試料を採集した.その試料は,現在ロシアから送付の途中にある.
|