研究概要 |
本年度は,当初計画ではウクライナ,ドネツ炭田での野外調査を予定していたが,南部中国の浅海相におけるBashkirian-Moscovian境界策定に関して詰めの調査が必要になったため,こちらの調査を実施した.そのため,ドネツ炭田での調査は他の予算でまかなった.また,得られていた試料について室内での処理を進め,同時にそのいくつかをまとめ,学会発表および論文執筆準備を進めた. 南部中国では,貴州省宗地セクションにおいてBashkirian-Moscovian境界前後の層準を精査し,この層準が基本的には極浅海相から成ること,4回の軽微な陸上露出(不整合)を伴うことを認めた,それと共に境界策定に重要なフズリナであるVerellaとEofusulinaの詳細な産出層準を把握した.宗地セクションではEofusulinaの初出層準は上記の不整合の直下であることから,ここにはVerella-Eofusulinaの連続的な進化記録が残されている可能性がある.本セクションは南部中国揚子炭酸塩プラットフォームにおけるBashkirian-Moscovian境界の検討に重要である. ドネツ炭田ではBashkirian-Moscovian境界を挟むKhanzhenkovskセクションで得られた試料の検討を進めた.それと共に本年の調査で得られたMalonikolaevkaセクションからの追加試料を検討した結果,Moscovianの基底を定義する可能性が高いと考えられていたEofusulina triangulaがこれまで知られていた層準よりさらに下位の12/2石灰岩から産出することを明らかにした.今後,この層準の再検討が必要になる. また今年度は,第17回石炭-ペルム系国際会議(オーストラリア,パース市)に参加し,コンビナーとして「Carboniferous Stage Boundaries:The Present State and Future」のシンポジウムを主催した.その中でMoscovian-Kasimovian境界及びKasimovian-Gzhelian境界策定の進捗状況について報告するとともに,南部中国で初めて報告された浅海成炭酸塩サイクロセムとそこから産するフズリナを用いたKasimovian-Gzhelian基底の認定,それに関連した"Carbonoschwagerinaもどき"フズリナの進化系統について報告した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で対象としている対象地域のうち,南部中国の浅海相についてはおおむね結果が出つつある.現在は斜面相についての詳細な検討を始めている.ウクライナ,ドネツ炭田ではBashkirian-Moscovian境界を中心に研究を進めてきた.その他2階については,野外調査はすでに終了している.日本国内の秋吉帯の海山型石灰岩では,連続的な層序の認定が難しいが,既存試料を基に境界策定に有望なフズリナを検討している.これらのことから,研究はおおむね計画通りに進んでいると判断される.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,2012年度の研究最終年度に向け,全体的なデータの取りまとめを行うとともに,そのいくつかを論文として公表すべく,論文執筆準備を進める.特に,南部中国浅海相からのデータはこれまで同地域で得られたことの無い新しい視点を含むものである.まずこれを中心に公表準備を進めていく予定である.
|