研究概要 |
節足動物の進化を探る上でクモ類はひじょうに重要な動物群の一つである。ブラジルのサンタナ層から産出する未研究の化石および現生のクモ類標本を比較形態学的、進化学的に研究し、クモ類の進化の諸相を明らかにすることが本研究の主な目的である。平成23年度においては、以上の目的に沿って、以下のように研究を進めた。 1.化石および比較標本の形態学的、分類学的研究の継続(代表者およびアルバイト) すでに経過した年度同様、国立科学博物館が所蔵するサンタナ層のクモ類化石3点に関して形態・分類学的な下作業を実施した。研磨、撮影、描画、測定、解剖など多岐にわたる作業のうち、高度な技術を要するものは代表者が、また比較的単純な作業はアルバイトが行った。それに係る研究環境は同館が現有する施設(人件費を含む)で賄い、物品費として103,737円を要した。 2.国内における参考資料の調査(代表者) 追手門学院大学の加村隆英教授ら国内の研究者と議論を進めた。また、日本蜘蛛学会第43回大会において「日本産カヤシマグモ科(Araneae,Filistatidae)の分類学的知見」の題で口頭発表を行った。 3.海外の研究者との打ち合わせ(代表者・研究協力者) 9月にイスラエルで開催された第26回欧州国際クモ学会議に出席し海外の研究者と情報交換を行い、ドイツ・フンボルト大学付属博物館のJ,A.Dunlop博士および米国カンザス大学のP.A.Selden教授らと本研究で得られたデータについて議論を行った。海外出張のための旅費(357,534円)およびその他の費用(38,729円)を使用した。スイス・ジュネーブ自然史博物館のP.J.Schwendinger博士と共著でRuvue Suisse de Zoologie誌上にハラフシグモ類に関する論文を公表した(研究発表の項参照)。
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