研究概要 |
南海トラフ沿いの四国海盆から採取されたIODP掘削試料の花粉分析、有機炭素・窒素分析、炭素同位体比分析及び鉱物分析を昨年度に引き続き行った。新たに掘削された同一サイトの試料を加える事により、後背地と見られる西南日本の過去2000万年間の連続的な発達史、気候変動史の復元が可能になった。その結果、日本海形成後の1400-1200万年前に紀伊半島で大規模な山脈隆起があり、花粉と陸起源の有機物に顕著に富んだ紀伊半島起源の砂が四国海盆に海底扇状地を作って堆積したこと、800万年前頃に伊豆半島起源と推定される軽石を含んだ、花粉と有機物に乏しい砂岩が大量に堆積したこと、花粉組成から推定される西南日本の気候は,世界的気候変動を反映して900万年前頃から冷温化し、その後寒暖を繰り返してきたこと等が解明された。また、陸から運ばれ海底に固定された有機炭素のフラックスの変化を見ると、西南日本陸上で植物が吸収した二酸化炭素が有機物となり、紀伊半島の山脈隆起により四国海盆に運ばれ、分解されにくい海底下に安定的に固定されたことを意味する。この有機物はプレートの沈み込みにより将来再び西南日本の付加帯にとりこまれ、メタンハイドレートや水溶性天然ガスのメタンの起源となる可能性も新たに判明した。以上の結果と、初年度に行われた日本海富山深海長谷のコアのタービダイトの記録と比較すると、数万年~10万年のタイムスケールでは気候変動により、100万年以上のタイムスケールではテクトニクスにより海底扇状地が発達し、二酸化炭素固定能力を増加させて地球温暖化を和らげていることが判明した。これまでに得られた結果の一部を国内外の学会と航海関連の会議において4件発表した。また、本課題に関連した海底扇状地に関する国際会議での発表と国際共同研究についての打合せのための海外出張を行った。
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