研究概要 |
下部マントルの様々な現象に大きく影響する鉄のスピン転移,特にMgペロブスカイト相におけるそれは長らく昏迷状態にあったが,最近2つの研究アプローチにより,この問題にもようやく解決の兆しが見えてきたと思われる,1つは,これまで2価鉄のスピン状態の解釈を2分してきたメスバウアー分光における四極子分裂についての理論的なアプローチであり,もう一つは3価鉄のスピン状態に大きな影響を及ぼす3価鉄とアルミの結晶内席交換反応についての実験的なアプローチである.我々は本課題研究で,これまで後者のアプローチでアルミを含むMgペロブスカイトとポストMgペロブスカイトにおける3価鉄のスピン転移の研究に取り組んできて,3価鉄とアルミのA,Bサイト間の交換反応が3価鉄のスピン状態に大きく影響する結果を得た.本年度は,いまだ十分に明らかとなってない,MgペロブスカイとポストMgベロブスカイトにおける3価鉄とアルミの結晶内席交換反応がどのような温度・圧力条件で起きるかに取り組んだ,実験はMgsio_3にFeAlO_3を固溶させたそれぞれの相の試料について,1600Kでアニーリングしたものと,もっと低温でアニーリングしたもの(Mgペロブスカイト)あるいはアニーリFングをしなかったもの(ポストMgペロブスカイト)について,放射光X線発光分光法及びX線回折法により取り組んだ,その結果,3価鉄とアルミの交換反応は,Mgペロブスカイトにおいては,温度が約1600K以上であれば圧力50-70GPa付近で容易に起きること,またポストMgペロブスカイトでも,温度1600K以上であれば圧力が70-110GPa付近で起きるであろうとの結果を得た.
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