本年度は、北海道豊羽鉱床周辺の地熱探査井試料を対象として、クロライトと共存する炭酸塩鉱物(カルサイトとロードクロッサイト)の炭素・酸素安定同位体測定と結晶中の流体包有物の均質化温度の測定を実施し、共存するクロライトの地質温度計による温度推定値と比較検討することによって温度計の確度を評価した。クロライトの化学組成から推定された生成温度と炭酸塩鉱物の生成温度とはそれぞれ折い値を示したものの厳密には相違があった。この理由は、脈や空隙を充填する鉱物間に沈殿の時間・空間約順序が存在し、かならずしも一致しないものと推定された。しかしながら、われわれの提案した温度計は熱水変質作用で生成したクロライトへも適用可能であることが証明された。これらの成果は、2つの論文として公表した。また、スペインで開催された3国粘土会議(2010TMC)で招待講演を行った。上記め研究と並行して、種々の浅熱水性鉱脈型に伴うクロライトを分離し、X線光電子分光法による第2鉄の割合を決定した。併せてEPMAによる分析および流体包有物の均質化温度測定などを行った。まだ、十分のデータが蓄積されたおらず、来年度も継続して実施する予定である。
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