研究概要 |
本研究では,1)マグマの分化初期に形成された斑晶(カンラン石と単斜輝石)中の微量なホウ素(B)とリチウム(Li)同位体比を精度よく分析するための技術開発を行い,2)この手法を南九州に産する比較的未分化な玄武岩の斑晶に適用して,マントル・ウェッジの不均質性を解明(「沈み込み成分」の特定と定量化)することを目的とする。 本年度はケイ酸塩(火山岩)と炭酸塩(サンゴ骨格試料)から,ホウ素を効率的に分離する技術(マイクロ昇華法)の開発を中心に行った。マイクロ昇華には,三角錐型のテフロン製密閉容器を用いた。100%近い回収率を得るために,昇華温度や昇華時間などの条件を変えて実験を行った。ケイ酸塩岩石には玄武岩(JB-1,JB-2,JB-3),安山岩(JA-1,JA-2,IA-3),流紋岩(JR-1,JR-2)などの標準岩石を,炭酸塩ではJCp-1サンゴ標準試料を用いた。まず,ICP-MSを用いたホウ素の定量分析では,推奨値とほぼ一致する定量結果が得られた。ホウ素の分離実験では,塩酸溶液を用い,100℃で10時間程度の昇華を行うことで,両タイプの試料(一部の岩石を除く)から,高純度でホウ素の分離に成功し,回収率も100%近い結果が得られた。本法は従来の多段階のカラム分離を必要とせず,ブランク値を抑え分離時間も短縮され,操作も簡便であることから,画期的な方法である。来年度は本方法で分離したホウ素の同位体比分析を行い,再現性と正確度のチェックを行い,実際のサンプルに応用できるようにする予定である。
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