研究課題
ダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置を用いた高圧下でのラマン分光測定システムの起ち上げを行った。先端径がφ0.6mmのダイヤモンドアンビル、ステンレスSUS304ガスケット、エタノール:メタノール=1:4混合溶液による圧媒体、およびルビー蛍光法による圧力測定を採用することにより、室温において約40GPaまでの圧力下でラマン分光測定が可能となった。AlO_6八面体が稜共有により繋がって結晶構造のフレームワークを形成しているカルシウムフェライト型CaAl_2O_4およびMgAl_2O_4について、1気圧から圧媒体が準静水圧とみなせる約20GPaまでの圧力下でラマン分光測定を行った。カルシウムフェライト型CaAl_2O_4においては26個のピークについて、またカルシウムフェライト型MgAl_2O_4においては18個のピークについて格子振動の振動数の圧力依存性を決定することができた。それぞれの圧力依存性からはモードグリューナイゼン定数が決定された。さらに、モードグリューナイゼン定数をそれぞれの格子振動モードの定積熱容量への寄与を考慮した加重平均を行うことにより、カルシウムフェライト型CaAl_2O_4の熱的グリューナイゼン定数は1.30(2)、カルシウムフェライト型MgAl_2O_4は1.50(4)と求められた。熱的グリューナイゼン定数は、非調和振動の効果を算出するために必要となり、定積熱容量と定圧熱容量を結び付ける非常に重要な値である。1気圧下でのラマンスペクトルを用いてモデル化した格子振動の状態密度分布から、定積熱容量を計算することができる。さらに得られた熱的グリューナイゼン定数を適用することで、特に実測では測定が困難なカルシウムフェライト型MgAl_2O_4の定圧熱容量をより高い信頼性で求めることが可能となった。このことから、地球深部で存在していると考えられているカルシウムフェライト相の熱力学計算への応用が期待される。
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American Mineralogist
巻: (In press)
Physical Review B