海底堆積物中に大量に存在するメタンハイドレートは、巨大な温暖化ガス源として気候変動との関連で注目されている。メタンハイドレートはゲスト分子としてメタンを包接した結晶であるため、メタンガスの取り込みや放出の理解には成長や融解過程の理解が重要であるが、海底下の長い時間スケールの現象のためあまり良く分かっていない。海底メタンハイドレートは様々なパターン(層状、粒状、団塊状、空隙状)で堆積物中に発見されているが、ガスハイドレートの成長実験で空隙状が再現され、研究代表者によるモデル実験により層状が再現されたことを除くと、他のパターンの再現には至っていない。成長過程の理解には、モデル実験の構築が重要であり、本研究はすべてのパターンを再現することを目的に、THF水溶液とガラスビーズをモデル系として、一方向凝固法という手法により成長するTHFハイドレートのパターンの観察を行った。ここで、粒径2μmと50μmの混合ビーズ中での実験の結果、上記のすべてパターンを再現することに成功した。これにより、海底メタンハイドレートの多様なパターン形成は、堆積物の粒径の分布が重要な役割を果たしていることを示唆する結果を示した。さらに本研究は、メタンガスと水の境界面ででの成長過程を理解するために、THFと水の濃度境界層における成長実験を行った。堆積物モデルは粒径2μmのビーズである。これにより、濃度境界層に沿って膜状ハイドレートが成長することで層状を形成し、また、絶え間ない核形成による多結晶集団の増殖によって粒状パターンを形成することに成功した。以上の二つのモデル系により海底メタンハイドレートの特徴的なパターンを形成したことは、従来理解が困難であった海底堆積物中での長い時間スケールにおけるメタンハイドレートの成長の速度論の理解へ向けた大きな前進と考える。
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