海底メタンハイドレートは、堆積物中に層状、粒状、塊状、分散状などの多様な形状で見つかる。結晶成長過程の形態形成を理解することは、生成のダイナミクスや環境条件を知る上で重要であるが、よく分かっていない。申請者は、THF水溶液とガラスビーズを混合したモデル系でのハイドレート成長実験により、すべての形状を再現し、定性的な形態形成モデルを提案した。ところが、系の単純化のためTHF-17H2Oという結晶組成の溶液を用いため、本年度は低濃度THF水溶液を用いてゲスト分子の拡散律速性の影響を評価する実験を行った。粒径2ミクロンのビーズを用いると層状の構造を形成するが、このときTHF濃度を低くすると、層構造の幅が狭くなることを実験的に示した。これは成長界面におけるTHF濃度の低下により成長が抑制された影響と考えられる。一方、層の間隔はTHF濃度によらず変わらなかった。このことから、濃度によらないファクターである含水比の分布が支配要因であると結論付けた。次に、ビーズに粒径分布があるときに形成する粒状や塊状という不定形の定量的評価法は確立していないので、今年度は画像処理・解析法を以下のとおり確立した。画像の二値化とノイズ(極めて小さな光の点)の除去の後、画像の特徴の支配要因である大きな結晶領域を抽出するために、平均面積をしきい値とする方法と全面積の90%まで採用する方法で大きな結晶領域を抽出した。そして、ハイドレートの凍上量、平均粒径や粒子数等を定量化し、成長速度依存性を示した。この結果、解析値のオーダーレベルが明確に3領域に分かれ、低速成長の塊状構造、中速の粒状、高速の分散状を定量的な方法で分類することに成功した。これは見た目の判断に依存しない点で優れており、他のモデル系や試掘の結果との比較に生かされるものと期待できる。さらに、実験的に形態を定量的に特徴付けたことで、今後、理論研究の進展を促すと期待する。
|