研究概要 |
海洋底の超巨大火山である太平洋中央海嶺(中米西方沖)およびシャツキー海台(日本東方沖)を対象として無水~岩水の溶融実験を行い,未だ明らかになっていない地下でのマグマの分化過程を解明することを目的としている.平成21年度は研究の初年度であるため,まず酸素雰囲気の制御が可能な常圧(100kPa)の管状溶融炉(雰囲気式高温急冷分析装置)を購入し,温度1000~1500℃の条件で岩石を溶融可能かどうかのテストランを行った.テストランには,統合深海掘削計画(IODP)第309次航海(平成17年に実施)の際に掘削されたハンレイ岩を用いた.この岩石はマグマ溜まりが地下で固化したものと考えられているため,地表に噴出したマグマの分化過程を知るための溶融実験の出発物質として相応しいと考えている. また,シャツキー海台の岩石に関しては,私は平成21年9月~11月に実施されたIODP第324次研究航海に共同主席研究者として参加したため,実験に最適と考えられるピクライトという岩石を持ち帰ることができた.ピクライトはマントルが溶けて生産された後,分化を受けていない本源マグマ組成の岩石と考えられるため,溶融実験を行うことにより,マグマがマントル内で生産された際の温度や深さを推定することが可能であるばかりでなく,マグマが地殻浅部で分化する条件を見積もることができると考えている.予算の一部には,この航海のために必要な研究打合せや研究成果発表のために使用した.
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