研究課題
本研究の目的は、地殻深部で塑性変形を受けた岩石であるマイロナイト(Mylonite)中の鉱物中の結晶粒界を、電子後方散乱回折(Electron Back-Scattered Diffraction : EBSD)や透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope : TEM)で観察・解析することにより、その粒界の特徴や粒径減少のメカニズムを明らかにすることである。本プロジェクトでは、構造の保存が非常によい北海道日高の変成岩中のマイロナイトを用い、そこに見られる変形鉱物中の結晶粒界の特徴を主にEBSD、TEMを用いて明らかにする。本年度は、すでにHuguesがEBSDを用いてその結晶方位分布を解析した、変形の著しい斜方輝石(Opx)中にどのような粒界や欠陥が存在するかをTEMで調べる実験に終始した。これらのOpxはb軸を回転軸とする結晶の"湾曲"や小角粒界が卓越していることがEBSDによりわかっている。普通輝石(Cpx)のlamellarが多く析出した試料の特徴的な部分から、これまでに15個のTEM試料をフォーカスイオンビーム(FIB)法で作製し、観察・解析を行った。その結果、1.結晶の"湾曲"は主としてOpxとCpxのlamellarの(100面)界面に集中した転位によって形成されている。2.ほとんど結晶方位の変化はないが、フッ酸のエッチングで表面に現れる(001)面に平行な筋は、転位列(dislocation array)に対応している。3.10°以上の高角度の対称結晶粒界にはもはや転位列は見られず、結晶はincoherentな粒界を形成している。等のことが明らかになった。今後結晶方位のずれが0.5~10°程度の粒界や、その方向が(001)面と平行でない粒界の構造を解析する予定でいる。
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