研究課題
今年度は、斜方輝石中の小角粒界の構造がそのミスオリエンテーション角(以下MO角と略記)の増大とともにどのように変化するかを、系統的にかつ原子スケールで調べることができた。その概略は、(1)構造が部分連続性をもつ小角粒界から完全に構造が断ち切られた通常の結晶粒界への遷移は、斜方輝石ではMO角が~10゜程度で起こる。(2)MO角が5~10゜の範囲では、通常の(001)[100]刃状転位とは異なる、周期的に構造不連続性をもった独特の小角粒界構造が形成される。(3)これらの(001)面にほぼ平行な小角粒界の発達ともに、これに垂直な形成エネルギーの高いバーガーズベクトルをもつ小角粒界が形成され、やがて結晶ブロックの回転-再結晶化により結晶の微細化が進行する。(4)結晶内で、転位による格子の褶曲は不均一に起きており、これは(001)面に垂直な小角粒界とともに、離溶した単斜輝石との(100)界面に非対称に形成された[100]刃状転位による"すべり褶曲"という2つの機構によると考えられる。これらの結果は、岩石中の斑晶の細粒化・再結晶化のプロセス、さらには局所的な岩石の脆弱化を理解するための重要な知見である。今後はこのような様々な粒界が、鉱物中の元素拡散にどのように関係していくかを調べる予定でいる。
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Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 12 ページ: doi:10.1029/2010GC003169
Marine Geology
巻: In press
Contributions to Mineralogy and Petrology
巻: (accepted)