研究概要 |
本研究の目的は水分子の重水素濃集に対する星間塵表面反応の寄与を実験により定量化することである.平成21年度は氷星間塵表面反応による水分子生成実験をより定量的に行ない,これまでの研究では分からなかった以下の知見が得られた.(1)以前の実験で,低温O_2固体(8K)に水素原子を照射した際に得られるH_2O_2,H_2Oの生成量がH_2O_2>>H_2Oとなっていたのは,H原子の固体内拡散が小さいことが原因だった.O_2とH原子を同時に低温基板に蒸着することによりH_2O(氷)の生成量が飛躍的に増加した.宇宙環境では同時照射の実験条件に近い.(2)O_2と水素原子の反応により生成されるアモルファス(H_2O)氷の赤外線吸収スペクトルを観測したところ,ダングリングボンドによるバンドが見られなかった.これはH_2Oの蒸着により生成したアモルファス氷とは異なる特徴であり,反応により生成したアモルファス氷は空隙の少ないコンパクトな構造であることを示している.また,この特徴は天文観測による氷星間塵のスペクトルとよく一致し,氷星間塵がO_2と水素原子の塵表面反応により形成されたことを示唆している.
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