今年度は、主に学術研究船白鳳丸のKH-9-5次航海で採取したインド洋の海水試料のNd同位体比の分析に専念した。分担者である田副は採取した表面海水の分析に関しては概ね完了した。また、西インド洋の5測点の鉛直分布に関しても半分以上の試料の測定を終えている。表面海水については、ベンガル湾より東部の海域についてはAmakawa et al(2000)による先行研究が存在するが、今回もほぼ同様の結果が得られた。今回初めて測定をおこなった西部インド洋の表面海水は緯度による明確なNd同位体比の違いが認められ、表層の流れ(海流)のパターンと良い一致を示した。従って、西部インド洋における表層流の時間(時代)変化を追跡する上で、Nd同位体比が極めて有効であることが示された。鉛直プロファイルに関しては、先行研究と同一測点のデータは存在しないため、厳密な比較、検証はできないが、水塊構造などを勘案するとほぼ矛盾しない結果が得られた。 一方、代表者である天川は田副の測定結果との比較を行うために、田副同様に海水試料(西インド洋の3測点)の分離精製を精力的に行った。分析には多重検出器型ICP質量分析計(MC-ICPMS)を用いるが、そのためのNdの分離精製方法の検討も併せて行った。また、学術研究船白鳳丸のKH-11-7次航海において、日本近海のシャッキー海台で海水試料と堆積物試料(有孔虫殻など)のNd同位体比が同一の値を示すか比較、検証することを目的とし、同一測点において両試料の採取を行った。
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