研究概要 |
本研究は,100fs電子バンチにより試料内にテラヘルツ帯チェレンコフ放射光を誘起させ,放射光の発生特性から試料のテラヘルツ帯複素屈折率を評価する新しい分光法を開発するものである.研究計画第2年度である本年度は,(1)光電子バンチの電気量増大,(2)電子バンチによるチェレンコフ放射光の発生,(3)放射光時間プロファイル計測システムの構築,の3項目を遂行した. (1) 光電子バンチの電気量増大:電子銃A-K間隙を狭くする,Ti : sapphireレーザー入射光学系の高精度化により,バンチ当たりの電気量を最大900pCにまで増やした.この実験結果を基に1平方センチメートル当たり30kAを越える電流密度で電子銃ができる物理モデルを解明した.電気量の増大に伴い,ビーム径が増大した.電気量900pCではビーム径は20mmに達した. (2) チェレンコフ放射発生:放射光発生器の直前に電子ビームコリメータを設置し,放射光発生実験を行った.予備実験として行ったスミスパーセル放射発生実験により0.1μJ程度の遠赤外光の発生を確認した.チェレンコフ放射では誘電体に電子バンチの一部が衝突するために起こるチャージアップのために光出力が1桁低かった.この問題を解決するために電子バンチ電気量の最適化を図っている. (3) 時間プロファイル計測システム:光電子バンチ励起用のTi : sapphireレーザーの主発振器出力の10%を取出し,THz-TDSシステムの励起・参照光として利用した.ハードウェアの構築は完了し,データ収集・解析ソフトウェアの開発を進めている.
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