研究概要 |
今年度は,(1)単層カーボンナノチューブの製作技術の確立と,(2)計算機シミュレーションコードの改良とそれを用いた炭素円柱と高強度レーザーの相互作用解析を目的とした研究を行った。 (1)においては,マイクロフェーズ社よりカーボンナノチューブ(CNT)合成用の反応チャンバーを購入し,これを用いて色々な基板と触媒を用いて単層CNTの製作を行い,最適な基板,最適な触媒の選定を行った。この結果,CNTの成長は触媒の有無に左右され,触媒がなければ成長しないだけではなく,触媒の付け方にも大きく影響されることが分かった。特に,触媒の膜厚に大きく影響され,基板上にできるだけ薄く触媒を付ける必要があることが分かった。そこで真空蒸着法やディップコート法などを試みて,できるだけ薄く,かつ均一に触媒を付ける方法を調べた。今後は触媒の付け方を工夫して最終目的であるCNTを任意に基板上に並べるための手法の確立を行う予定である。 (2)に関しては,これまで開発をしてきた電離・衝突過程を含んだ粒子コードをさらに改良し,MPIを用いた並列化を行ってさらに大規模なシミュレーションができるようにした。格子状クラスターとレーザーの相互作用を行うためには従来行ってきた単一クラスターとレーザーの相互作用計算では不十分で,多数のクラスターに同時に照射した様子を解析する必要がある,並列化による大規模化はこのためであるが,プログラムのメンテナンスを容易にするために,新たにMPIを用いたコードを生成するプリプロセッサを作成し,これにより既存のコードをできるだけわかりやすく並列化させた。作成したコードを用いて炭素円柱とレーザーとの相互作用を計算した結果,共鳴吸収現象が発生する電磁波のスペクトルに影響を与え,共鳴吸収の閾値を超えると非線形性により高調波の成分が大きく増大することが分かった。今後は格子状クラスターからのコヒーレント放射の計算をする予定である。
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