研究概要 |
今年度は,(1)カーボンナノチューブ(CNT)の周期的配列成長技術の確立と,(2)電離・衝突効果の入った粒子コードを用いて高強度レーザーをカーボンナノチューブに照射した時の非線形応答の解析,を目的として研究を行った。 (1) において,CNTは成長基板上の触媒金属部分より成長するので,半径数ミクロンの触媒金属円板を規則的に成膜する方法として,高分子の自己組織化ハネカム膜をテンプレートにする方法を試みた。1.5wt%のポリスチレンのレモゾール溶液をディップコート法によりスライドガラスに塗布し,水蒸気を吹きかけながら乾燥させることでハネカム構造の生成を試みたが,規則的周期を持つ条件を見つけることができなかった。現在,膜表面への水蒸気の付着を容易にするため,水溶性高分子であるポリアクリルアミドをポリスチレン溶液に添加して,規則的に配列する条件を調べている。 (2) においては,高強度レーザーをCNTに照射した時に引き起こされる電子の非線形振動により発生する高調波の様子を電離・衝突過程の入ったシミュレーションコードを用いて解析した。その結果,単一モードのレーザー照射の場合,発生する高調波が奇数次のみであることがわかった。これは,CNTが円筒で対称性を持つため,電子にとっての束縛ポテンシャルも対称で,その結果奇数次モードのみ発生するためである。この結果から考察するとCNTのレーザー吸収によって低周波光を発生させるためには,0次付近の励起を起こす必要性から,シングルモードでは不可能である。そこで,倍高調波レーザーを基本波と共に照射した計算をしたところ,予想通り周波数0付近の低周波モードが励起されることがわかった。以上の結果より,基本波と倍高調波の組み合わせにより,強い低周波を発生させることが可能なことがわかった。
|