研究概要 |
今年度は,(1)カーボンナノチューブ(CNT)の周期的配列成長技術の精度向上と,(2)電離・衝突効果の入った粒子コードを用いた2波長高強度レーザーをCNTに照射した時の低周波電磁波発生の解析,を目的として研究を行った。 (1)においては,今年度も昨年度に引き続き,半径数ミクロンの触媒金属円盤を規則的に生膜する方法として,高分子の自己組織化ハネカム膜をテンプレートにする方法を試みた。昨年度は高分子溶液としてポリスチレンのレモゾール溶液を用いて良い条件を見つけることができなかったが,今年度は溶媒としてレモゾールの代わりにクロロホルムを用いて,直径1~2μm程度のほぼ均一なポリスチレン多孔質膜をスライドガラス上に得る事に成功した。ただし,周期性はまだ良くないので,高分子溶液の乾燥中に溶液中に一方向の流れを作るなどのさらなる工夫が必要である。周期性が良くなれば,これに金属触媒を真空蒸着し,それを成長基盤として周期的CNT薄膜を成膜する予定である。 (2)においては,高強度レーザーをCNTに照射した時に引き起こされる電子の非線形振動により発生する高調波の発生強度を電離・衝突過程の入った粒子コードを用いて解析した。昨年度の結果より単一モードのレーザー照射の場合は奇数次の高調波しか発生しないことがわかっているので,倍高調波レーザーを基本波と同時に照射する手法を用い,低次周波数のモードが発生することを確認するとともに,発生する電磁波強度の入射レーザー光強度依存性を調べた。その結果入射レーザー光強度の増加とともに,発生する電磁波強度が増大し,倍高調波の強度を基本波と同じ比率で増加すれば,それに伴って0次付近の低周波電磁波の強度も増えることが分かった。さらに入射レーザー光がある閾値を超えて増加すると,共鳴吸収現象により低周波電磁波強度が大きく増加することも分かった。
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