生きたままの細胞の高い空間分解能での瞬間撮像を実現するために、レーザーのエネルギーを効率よく注入できる極薄膜ターゲットの開発を行った。厚さ100nmの窒化シリコン薄膜上に厚さ10nmから50μmまで段階的に厚さを変えて金を蒸着した極薄膜ターゲットの製作を行った。日本原子力研究開発機構が保有するパルス幅600ps、出力10J、波長1.053μmのNd:glassレーザーを極薄膜ターゲットの金表面に集光照射し、発生する水の窓波長城(2.3~4.4nm)の軟X線の強度と光源のサイズ及び形状を斜入射型軟X線分光器と軟X線プラズマカメラにより計測を行った。ターゲット上でのレーザー強度は、約2x10^<14>W/cm^2と見積もられた。通常、ターゲットの厚さが薄いほど効率良くレーザーのエネルギーをターゲットの極小領域に注入することが可能であるが、レーザーパルスのコントラスト(レーザーパルスのピークとバックグランドの強度比)が小さい場合、パルスの主要部分が到達する前にターゲットが破壊されてしまうため、十分な薄さの実現が困難であった。我々が使用したレーザーシステムは前段部にOPCPAシステムを導入することにより10^6以上の高いパルスコントラストを実現し、ターゲットの破壊を防いだ。その結果、金の厚さが20nmの時に最大のX線強度が得られることがわかった。この極薄膜ターゲットを試料ホルダーに組み込むことにより光源一体型試料ホルダーによる高効率なX線照射の実現が可能であることがわかった。 平成22年度は、極薄膜ターゲットを用いて発生した水の窓波長域軟X線を実際に細胞に照射し、生きたままの細胞のX線瞬間撮像が十分可能であることを実証する。
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