研究課題
不対電子に由来する軌道角運動量をもつ2原子ラジカルの分子間相互作用について詳細な知見を得る事を目的に、昨年度の一酸化窒素ラジカル(NO)に続いて、今年度はOHラジカルと希ガス原子から成るラジカルクラスターを対象に研究を継続した。具体的にはフーリエ変換マイクロ波分光法による純回転遷移及び2重共鳴分光法による分子間振動回転遷移の観測を行った。本研究の目的においてNOとOHラジカルの主な違いは、縮重した最高被占軌道(HOMO)の占有電子数の違いであり、それぞれNOには1つの、OHには3つの電子が入っている事である。OHラジカルの縮重した1組のHOMOは、主に酸素原子の2p_xと2p_yの性質を有し、いずれも結合軸に垂直に大きく張り出している。一方の軌道には2つの電子が対を成して入り、もう一方の軌道には不対電子が入っている。NeやKrなどの様々な種類の希ガス原子とOHとの分子間相互作用を系統的に調べる事で、不対電子が占有している軌道と希ガス原子との間には、2つの電子が入っている軌道に比べてより大きな引力が働いている事がわかった。同様の傾向はNOラジカルでも観測された。詳細な分子間相互作用ポテンシャル曲面(IPES)の解析から、この違いは2つの軌道における交換斥力の差によるものである事を明らかにした。分子間相互作用のOH結合距離依存性を調べる目的で、Krの3種類の同位体と、更に重水素置換したODラジカルから成るクラスターについても同様の研究を行った。Born-Oppenheimer近似を仮定し、OHの結合距離の変化を考慮した解析を適用することで、同位体置換による分子間相互作用の違いをマイクロ波分光の実験精度内で再現する事に成功した。
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