研究概要 |
可視部の強い吸収に対応する電子基底状態Xから電子励起状態Bへの遷移を、神戸大学チームと協力し、超高分解能レーザーシステムにより観測、解析している。電子振動基底状態について本研究班がえたもっとも低い2個の回転準位の間隔に等しい分裂をもち、特異的なゼーマン効果を示す二重項を検出することに成功した。B-X,0-0バンドの回転帰属に有力な糸口を与えるものである。 電子基底状態に対しては、高分解能フーリエ変換赤外分光法により、^<14>NO_3のみならず、^<15>N同位体についても新しい振動バンドを観測、解析した。この際NO_3ラジカルによるHe-Neレーザー線の吸収を実時間モニターすることにより実効感度を著しく向上した。大きな問題点の一つは、従来1492cm^<-1>バンドに帰属されていたv_3基準振動が、1100cm^<-1>付近にあるというStantonの予測である。Stantonの計算では基底状態からv_3への遷移モーメントは著しく小さく、実際本研究班はv_3吸収を予測された周波数近辺には観測できなかった。そこで1492cm^<-1>バンドがStantonらの予測通りv_3+v_4であるか否かを検討している。同じD_<3h>対称性のSO_3分子に対してMakiらが展開した方法を適用したところ、高いN,Kの回転線は再現できたが、低い線のフィットが悪く、帰属を確証するには至っていない。v_4状態から1492cm^<-1>バンドの上の状態(v_3+v_4)へのホットバンドを検出した。v_3+v_4状態には、v_3にはないA対称性のレベルが2個あるので、これらA状態への遷移の観測、帰属を試みた。実際にバンドが観測されたが、帰属を確認する必要がある。これまでに観測解析した赤外バンドの1次コリオリ結合定数とスピン・軌道相互作用定数は相関が大きいことを指摘した。B状態のJahn-Teller効果が振電相互作用を通じて電子基底状態に転移した結果と推定され、今後理論的解析を行う計画である。
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