研究課題
本年度は従来より生体内多核遷移金属錯体の理論的研究に使用されて来たスピン分極型の密度汎関数法(HDFT)の適用性とその限界を解明するために、高精度計算手法の中でも今後の展開が特に期待される多配置参照結合クラスター(MRCC)法を用いて、エネルギーや磁気的相互作用を計算し、比較検討を行った。其の結果、HDFT計算を行う前に比較的小さい系で(MRCC)法の結果を再現するようにHDFT計算での汎関数を最適化しておき、大きい系にそれを適用することが大切であると結論された。その結果を踏まえて、HDFT法の一種であるUB3LYP法を用いて、大きい系の典型例であるメタンを酸化してメタノールを生成するメタンモノオキシゲネース【((MMO)(Fe202(L))L:アミノ酸配位子】の電子状態とその酸素添加反応の遷移状態を求めたところ、実験と良い一致を見いだした。さらに、計算および実験結果の比較検討より、同反応機構を解明することに成功した。さらに、UB3LYP法を用いて、太陽光を利用して水を分解し、酸素分子を発生する光合成活性中心に存在するCaMn405クラスター(1)の電子スピン構造と反応性に関する理論計算を実行した。とくに、1のクラスターではイオンが4個存在するので合計48の異なる対称性の破れた(Broken Symmetry (BS)) UB3LYP法が必要であるので、その構築法に関する知見を得た。
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