研究課題/領域番号 |
21550015
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金子 文俊 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (70214468)
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研究分担者 |
奥山 健二 大阪大学, 理学研究科, 特任研究員 (30038020)
川口 辰也 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10314353)
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キーワード | シンジオタクチックポリスチレン / 包接錯体 / X線散乱 / ゲスト分子 / 小角散乱 |
研究概要 |
シンジオタクチックポリスチレン(sPS)は、低分子化合物をゲストとして結晶領域に取り込んだ高分子-低分子複合体を形成する。ここでは、(T_2G_2)_2ラセン鎖形態をとるsPS鎖が並列して高分子シート構造をつくり、そのシート間に生じる単位格子当たり2個のケージにゲスト分子が導入されている。適当な処理をおこなうことでゲスト分子を他の分子に置換することできる。この現象を利用すると種々の低分子化合物を結晶領域内に導入できることが明らかになってきた。このsPSのゲスト交換過程をミュンヘン工科大学内に設置されているFRM II炉を中性子線源とした小角散乱装置KWSを利用して追跡することを計画して実験を行い、中性子小角散乱によりゲスト交換に関する有用な情報が得られることを実証した。しかしその後、FRM II炉が定期検査に入り、また定期検査後の立ち上げが周辺装置の不具合等の原因で非常に遅れることが判明したために、以下の二点を中心にした研究を行った。 1.エチレングリコール(C_2H_4O)_n骨格をもつ分子が、sPSの結構格子と親和性が高いことを見出した。この骨格構造をもつ線状化合物であるポリエチレングリコールオリゴマー、そして環状化合物であるクラウンエーテルがsPSの結晶格子内に導入されて包接化合物を形成することを明らかにした。 2.KEK(つくば)の放射光施設を利用して、ゲスト交換過程における構造変化を追跡するX線小角および広角散乱実験を行った。通常の単に分子が入れ替わるゲスト交換では結晶のラメラの周期には変化が生じない。しかし、空孔内のゲスト分子が一個から二個に増加する交換過程においては、ラメラ周期の増大を伴うことが判明した。
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