人工光合成ナノバイオモデル系の構築・実現を目指すとともに、光合成反応中心内に存在するクロモフォアー間の連続電子移動反応機構を解明する目的で、凝縮系並びに固体表面上での光機能分子-タンパク質複合体系の分光研究を行ってきた。平成21年度は、電子授受を伴うエネルギー変換過程で重要な役割を果たしている光機能分子-蛋白質複合体のバイオマテリアルのモデル化をレーザーアブレーション法により試みた。貧溶媒となる水中で亜鉛テトラフェニルポルフィリンのような金属ポルフィリンと電子供与性を有するポリヒスチジンにパルスレーザーを照射するとナノコンポジットが効率よく生成することを見出した。生成した複合体のサイズは、AFMやTEM画像の測定結果から50~150nmの範囲にあることがわかった。さらには、金属基板上に光機能分子-蛋白質複合体粒子を固定化することにも成功し、その表面増強FTIRスペクトルを測定したところ、金属ポルフィリンとポリヒスチジンが分子間で相互作用し、そのコンフォメーションが規則構造を有して固定化されるという極めて興味ある結果が得られた。このことは、本系にレーザーアブレーション法を用いると、構造配列が規定されたナノ複合体粒子を容易に創製できることを示しており、高効率なエネルギー移動や電子移動反応を実現できるナノバイオシステムを構築できることが明らかとなった。平成22年度はその光誘起電子移動反応のダイナミクスを明らかにするための分光測定実験を計画している。
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