研究概要 |
本実験で、動的光散乱法やAFMを用いて、精度のよい粘液作用メカニズムの解析を行うためには、用いる粘液成分を物質として純度の高いものとして取り出すことが必要であったが、昨年度までに実験に用いるクラゲ由来ムチン試料の精製方法を再検討して、純度を上げ、さらに詳しい構造解析により構造の曖昧さを解消する実験が完了した。そして、抽出後のムチンに対して、ペプチド構造解析ならびにNMRによる糖鎖構造解析を行ったところ、純度が高く均一性の高いムチンが得られたことが証明された。採集直後のムチンはミネラル成分との化合物であるが,陰イオン交換樹脂との相互作用によってナトリウム塩に置き換えることにより、溶解度の高い均一なムチンとなることを見いだした。 このナトリウム塩を用いて、ムチンが金属イオンとどのように作用するかを調べた。ムチンは天然のイオン交換樹脂として働き、周期律表の上での30種類以上の金属イオンと反応することを見いだした。この吸着反応により、ムチンは不溶化し沈殿する。これはクラゲのバイオミネラリゼーションに大きく関わっていると推察した。 この沈殿を乾燥した固体を用いてXPS測定を行い、金属とリン原子の原子比を測定した。 このほかに希土類イオンを吸着して蛍光性を持たせたムチンや、銀イオンを吸着して光感受性を持たせたムチンを作った。 またDLSを用いて、ゼータ電位を測定することにも成功した。
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