本研究課題では、分子状物質の応答機能が、物質の持つ第2の応答機能により制御された多重入力、多重出力型応答機能分子の構築を目指して検討を行ってきた。 平成23年度は本研究課題の最終年度として、熱的な刺激に対する応答機能との複合化に、完全なホメオトロピック配向を示す特異なディスコチック液晶相の発現に至ったこれまでの研究成果を基に、良好な電子的な応答機能が期待されるフタロシアニン骨格をコアとして、長鎖アルキル基の置換した酸化還元活性なアズレン末端基を複数個結合したフタロシアニン誘導体の合成を検討し、低収率ながらも期待されるフタロシアニン誘導体の合成に至った。 また、我々が提案してきたシアニン-シアニンハイブリッド構造による分子設計指針に則り、アズレン末端基を持ったハイブリッド型カルボカチオンを構築することで、三段階の良好な電気化学的な応答機能(エレクトロクロミズム挙動)を示す酸化還元系の構築に成功した。ハイブリッド型カルボカチオンの形成は溶媒の液性に依存するハロクロミズム等、複合する領域の拡張に期待がもたれる結果と考えられる。 また、酸化還元活性な蛍光性の発色団として、長鎖アルキル基の置換したポリフェニレン骨格の構築を検討してきた。その結果、環状のアセチレン化合物を基に、長鎖アルキル基の置換した環状のポリフェニレン骨格が構築できることを見出した。その過程で長鎖アルキル基を持ったビフェニル型の化合物が固体状態においても強い蛍光を示すことが明らかになった。酸化還元機能ならびに光応答性機能との多重応答機能について期待がもたれる結果と考えられる。さらに、電気化学的な応答機能とナノ構造体の形成との複合機能の構築を目指して、化学合成によるカーボンナノチューブセグメント構築への検討を進めた。
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