研究概要 |
ケイ素,ゲルマニウム,スズ等の高周期14族元素からなる不飽和化合物の化学は、現代有機金属化学の基盤研究として発展してきた。炭素化合物との特性の相違が明確になってきており,応用研究を視野にいれた展開の機が熟してきたといえる.そうした背景のもと,高周期元素からなる環状π配位子もつ有機金属錯体を合成し、その構造や性質の解明を研究目的とした。本基盤研究(C)の課題においては,平成21および22年度までに,ケイ素、ゲルマニウム等の高周期14族元素からなるシクロブタジエンジアニオンやシクロペンタジエニドの高効率的合成法を確立した.平成23年度に得た特筆すべき成果としては(1)テトラゲルマシクロブタジエンジアニオンを利用した遷移金属錯体の合成と構造解析(2)6π電子シクロブタジエン配位子の遷移金属配位子としての特性の解明(3)高周期元素シクロブタジエンジアニオンを用いた新しいシリレン錯体およびゲルミレン錯体の合成に達成したこと等が挙げられる.特に成果(2)に関しては,フロンティア軌道において高周期元素になるほどHOMOが上昇し、LUMOが下がることを反映し,極めて明確に周期性が認められることを実験的かつ理論的に明らかにした.つまり,テトラゲルマシクロブタジエン配位子は同族の炭素系やケイ素系の配位子と比較して,最も強いπドナーであることが今回の研究により明らかとなった.以上の研究成果は典型元素と遷移金属のさらなる共同効果,相乗効果を期待させるものであり,新たな環状π配位子として応用するための基盤となる.
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