研究概要 |
1,3-双極子は不斉付加環化反応等により有用な光学活性複素環化合物が合成できるにもかかわらず,効率的立体制御法は未確立であった。本研究では,「キラル環境にある金属複数による1,3-双極子の高次立体制御」というコンセプトに基づき,従来困難であった1,3-双極子が関与する反応の立体化学を高度に制御し,不斉付加環化反応等による光学活性複素環化合物合成法を革新することを目的とし,特に協奏的および段階的不斉付加環化反応において両者の特徴を活かした革新的手法の開発を試みた。 [1]アゾメチンイミンの不斉1,3-双極子付加環化反応 化学量論量の酒石酸エステルのマグネシウム塩由来の複核キラル環境で,アリルアルコールへのアゾメチンイミンの不斉付加環化反応を実現していたが,酒石酸エステルの量を触媒量(0.2当量)に減らすことが可能であることを見出した。添加剤として臭化マグネシウムを加えると再現性よく,高エナンチオ選択的に光学活性ピラゾリジンを得ることができた。一方,求1,3-双極子剤として1炭素多いホモアリルアルコールを用いた場合にも,エナンチオ選択的に反応が進行することも明らかにした。 [2]ニトロンを用いる段階的不斉付加-環化反応 酒石酸エステルの亜鉛塩存在下,亜鉛アセチリドのニトロンへの段階的不斉求核付加-環化反応により光学活性4-イソオキサゾリンが生成すること,この中間体を求電子剤で補足することにより光学活性4置換4-イソオキサゾリンを一挙に合成できることを見出した。さらに分子内での捕捉による2環性化合物の一段階合成を試みたが,現在のところ目的の生成物は得られていないので,今後の検討課題である。
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