1.気体選択的透過膜の創製:種々の分子量(8000から100000)のポリエチレングリコール(PEG)を高分子主鎖(軸部)に用い、また環部にα-シクロデキストリン(CD)を有するポリロタキサンの合成を検討した。その結果、35000の分子量以下のPEGを、また活性化剤にDMTMMを用いた場合に、アミド化による末端封鎖が進行し、ワンポットで比較的高収率で、高比率に環部が導入されたポリロタキサンが得られた。続いて得られたポリロタキサンの膜形成を行ったところ、低分子量のPEGを用いた場合には膜強度が十分ではなかった。そこで、膜強度を高める目的で、高分子量のPEGとロタキサンのブレンド膜の合成も試みたが、現在まで十分な強度を持つフィルムの形成には成功していない。一方、35000と50000の分子量のPEGから合成したポリロタキサンの中には、気体透過速度が測定可能な高分子膜の形成が認められた。PEGの分子量が35000でCD導入率が70%からなるポリロタキサンフィルムの気体透過結果は、酸素透過係数と窒素透過係数の比が13.7となり、これまで報告されている透過膜の中で、非常に高い酸素選択性を示すことが判明した。 2.可動するロタキサンの合成:'分子コネクタ'による空間変動可能なロタキサンシステム合成の予備検討として、異なる2種の置換基を持つ[2]ロタキサンを合成し、液性変化に対するスイッチングの検討を行なった。その結果、強酸性から強塩基性に液性を変えることで、3状態のスイッチングが進行することが確認された。
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