研究概要 |
本研究では、ポリペプチドの水素結合に基づくα-ヘリックス構造の形成と類似した、しかし異なる原理に基づく分子内自己組織化による螺旋形成と、さらなる分子間自己集積化による階層的高次構造形成を、人工的な機能性Π電子系を構成単位として、独自の分子プログラミングに基づいて達成することを目的としている。すなわち、自己組織化を組み込んだ新しい物質構築原理の確立、複数の非共有結合性相互作用の共存・精密制御による高次構造形成、構造特異性と高次構造性および電子的特性に基づく新機能開発、を目指す計画である。昨年度、ピリジン-ピリミジン交互ストランドの周辺部にアルキル長鎖を配した誘導体の螺旋自己組織化と階層的自己集積化を検討し、HOPG基盤上で螺旋構造が二次元配列することを確認していたが、本年度このモデルをさらに詳細に検討する中で、右巻き螺旋と左巻き螺旋が自発的に一列に配列していることが分かった。この研究成果は、一件の学会発表として報告した。また、螺旋性誘起能を持つ新たな構造モチーフとして、1,3,4-オキサジアゾールおよびチエノ[3,4-b]ピラジン部分が、ピリジン環の2,6-位と交互に連結した構造を持つ人工オリゴマーの合成法を開拓することを目指したが、溶解度の問題で詳細な知見を得るには至らなかった。また、1,2,3-トリアゾールの利用は類例が報告されたため検討を打ち切った。この過程で、チエノ[3,4-b]ピラジンを含むストランドが予想したコンホーメーション特性を持つことを確認し、一件の学会発表として報告した。現在、4位に可溶性基を持つピリジン誘導体を用いて、十分な溶解度と結晶性を併せ持つ1回転以上の螺旋自己組織化分子と対応する大環状化合物の合成を進めており、次年度も検討を継続する予定である。
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