研究概要 |
三重項カルベンを磁性源として利用した有機磁性体の開発を目指し、平成21年度は、カルベンの立体保護基としてメチル基またはブロモ基を有し、カルベン前駆体であるジアゾ化合物において、ユニット同士が連結可能な複数の連結用置換基を有するジアゾ化合物の合成を行った。そして、これらジアゾ化合物を低温マトリックス中で光分解し、発生する三重項カルベンの特性化と安定性の評価を行った。すなわち、オルト位にカルベンの立体保護基として4個のメチル基を有し、メタ位に薗頭カップリング反応が可能なエチニル基を有するジフェニルジアゾメタンと、オルト位に4個のメチル基を有し、パラ位に1または2個のヨード基を有するジフェニルジアゾメタンを合成した。また、単独で薗頭カップリング反応を行うことが可能なジアゾ化合物として、(3,5-ジヨード-2,4,6-トリメチルフェニル)(2,6-ジブロモ-4-トリメチルシリルエチニルフェニル)ジアゾメタンも合成した。この単独でカップリング反応可能なジフェニルジアゾメタンの2-MTHF溶液を77Kで光分解し、対応する三重項カルベンのESRシグナル(50-180mT)とUV/visスペクトル(308,332nm)を観測した。更に、これらマトリックスを昇温してカルベンの消失温度を調べたところ、カルベンのESRシグナル、UV/vis吸収ともに100Kで消失することがわかった。この消失温度は同種の立体保護基を持ち連結用置換基(ヨード基やエチニル基)を持たない類似のジフェニルカルベンのものと同程度であり、メタ位やパラ位に連結用置換基を導入しても三重項カルベンの安定性は殆ど変わらないことを明らかにした。
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