研究概要 |
三重項カルベンを磁性源として利用した有機磁性体の開発を目指し、平成22年度はセルフカップリングによりポリマー化が可能なジフェニルジアゾメタンとして、カルベン発生時の立体保護基として2',6'位にブロモ基、2',6'位にメチル基を有し、連結用置換基として4位にエチニル基を3',5'位にブロモ基を有するジアゾ化合物を合成した。低温マトリックス中でこのジアゾ化合物の光照射によって発生させた三重項カルベンはESR測定では110mTに、UV-vis測定では308、332nmに観測された。このマトリックスを昇温することによりカルベンの安定性を調べたところ、このカルベンは100Kまで安定であった。また、室温でのレーザー閃光光分解により、このカルベンは二次減衰し、半減期0.49sの長寿命カルベンであり、磁性源として有効であることがわかった。次に、このジアゾ化合物を温和な薗頭カップリング条件下でポリマー化、GPC分離を行い、2-4個のジフェニルジアゾメタンユニットを有するオリゴマーが主に生成していることがわかった。この三量体を低温マトリックス中で光分解し、発生するトリカルベンの特性化と安定性の評価を行ったところ、七重項トリカルベンのものと考えられるESRシグナルが325mTに、UV-vis吸収を333、348、548、577、609nmに観測された。また、昇温実験からこのトリカルベンは90Kまで安定であった。更に、セルフカップリング可能なカルベン前駆体として、オルト位に4つのメチル基を有し、片方のフェニル基の4位にエチニル基を、もう片方の3,5位にヨード基を有するジフェニルジアゾメタンも合成した。
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