研究課題
ジピリルピリジン鎖を3つ含むクリプタンド状ポルフィリノイドの配位化学を明らかにするため、立体的な嵩高さの異なるアルキル置換基をピロールβ位に有する3種類のクリプタンド分子を合成し、アルコールとの配位平衡に於ける熱力学パラメーターをVT-NMRにより決定した。ピリジン側ではなく橋頭位側に立体障害が少ないクリプタンドが最も平衡定数が大きく、クロロホルム中でエタノールが配位する自由エネルギー変化は298Kに於いて-34KJ/mol、トルエン中では-42KJ/mol、と求められた。一方、橋頭位側に立体障害が多い異性体クリプタンドでは-20KJ/molであった。これらの値は3個のエタノールがアロステリック配位する際の値であり、単純なエタノールに対する値が決定できた事は意義がある。一方、上記のような卓越した機能を持つクリプタンド分子の空気酸化耐性の向上に向けて、新合成手法開発によるクリプタンド橋頭位への置換基導入について検討した。クリプタンドの前駆体であるが、反応性に富むために単離が困難であったジピリヘキサフィリンを収率よく得て、そのメソ位反応性を明らかにし、メソ位にシアノ基を有するジシアノジピリヘキサフィリンを得た。これを用いて、ジピリルベンゼン、ジピリルピリジンとのスカンジウムトリフラート触媒存在下での反応を行い、目的のクリプタンド分子を高収率で得る事に成功した。実際に、これらの分子では酸化耐性が大幅に向上し、蛍光分析にも十分使用できる。多重配位によるアロステリックな配位挙動の開発については、テトラベンジドデカフィリン、ジベンジデカフィリンに対するカルボン酸の4重配位、非環状ヘキサピロールと酒石酸誘導体との2重配位の配位平衡について検討し、アロステリックな錯体形成が起こっている事を明らかにした。
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