本研究では、クリプタンド(籠型分子)の新しい配位様式を提案し、アロステリック分子システムとして機能する上で要請される分子構造とその動作メカニズムを明らかにする事を目的とした。6個のピロールと3個の芳香環からなる3次元構造を持つクリプタンド型ポルフィリノイドの誘導体を多数合成し、ゲスト分子の多重配位挙動について明らかにした。ピリジン3個および2個を含むクリプタンドは3個および2個のカルボン酸が配位し、ジクロルメタン中での滴定実験により理想的な正のアロステリック効果を観測した。アセトニトリル中ではアロステリック効果は見られず、1個および2個のカルボン酸が配位した中間体に関する知見を得ることができた。ピロールβ位に異なるアルキル置換基を有する3種のクリプタンド分子を用いてアルコールのアロステリックな配位挙動を明らかにした。温度可変NMR実験により、ピリジン側のピロールβ位に嵩高いイソブチルを有するクリプタンドの高いバインディング能が明らかになった。安定性に優れたジシアノ置換クリプタンドの合成にも成功したので、クリプタンド型ポルフィリノイドの機能開発の進展が期待できる。
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