研究概要 |
1電子酸化・還元をされやすいπ共役系骨格の両端にニトロニルニトロキシドラジカルを有する有機ジラジカルの合成を目指した。昨年度に合成した段階までを今年度は大量合成し,残り3段階で完成する予定であった。2段階目の酸化反応が極めて収率が低かった。そこで,酸化反応に強い保護基,酸化条件を探した。ジフェニルtブチルシリル基の導入反応では,通常出来るはずがない塩基として用いたイミダゾールが取り込まれたアミナールが生成し(X線結晶構造解析により分子構造を決めた),目的物は低収率でしか得られないなど,合成は難航した。最終段階である脱保護について,わずかに得られたシリル保護基を持つジニトロニルニトロキシドラジカルをフッ素イオンにより脱保護を検討した。 目的物と類似した骨格中にニトロニルニトロキシドラジカルを2つ持つモデル化合物を合成し,ESRスペクトルを,測定した。濃赤紫色を呈するこのジラジカルは,予想通り,二つのラジカル間に相互作用があることが,5つの等価な窒素原子による9重線の超微細構造のあるスペクトルが得られた事からわかった。 目的物を含む多くの共役系ジラジカルを1電子酸化・還元して得られるであろう化学種について,DFT理論計算を行った。共役系として,チエノチオフェン,ジフェニル,ジフェニルアセチレン,パラキノンなどを持つスピン種について,分子内にどのようにスピン分布があり,それは,スピン整列に関して有利な分布であるか,また多重項間のエネルギー関係を調べることで,どのスピン状態が基底状態になるかを推測した。
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