研究概要 |
本研究では、反応試薬をポリマー、特に可溶性ポリマーに担持させることで、回収・再使用容易な環境調和型反応を開発するのが目的である。ターゲットとしては、酸化試薬とホスフィン試薬を視野に入れ、今年度はまず、試薬の合成・構造解析と、それを用いた反応を試みることを目指した。 酸化試薬としては、TEMPOを選択し、様々な手法により可溶性ポリマーであるPEGに担持させることを試みた。その結果、コハク酸をスペーサーとしてエステル結合により担持する手法と、クリック反応によりトリアジン環をリンカーとして担持する手法により、目的とするPEG担持試薬を合成することに成功した。どちらの手法も極めて容易な手順で目的物を得ることができた。また、分子量の異なるPEGを用いることで複数の試薬を合成した。このようにして合成した試薬は、^1H NMR,^<13>C NMR,及びESI-TOFMSにより構造決定し、間違いなく担持試薬が構築されていることを確認することができた。また、担持体の純度を算出する方法も確立することができた。得られた試薬をPEG担持TEMPOを用いて、オキソンを再酸化剤とした反応を試みたところ、第一級、第二級アルコールを効率的に酸化することに成功した。今後、反応条件等を最適化する予定である。 一方、ポリマー担持ホスフィンの合成も行った。PEGを担体とし、クリック反応を用いて試薬の合成を試みることで、目的とするPEG担持ホスフィンを効率的に合成することができた。得られた試薬を用いて、光学活性な1,2-ジオールモノトシラート体に対して光延反応を試みたが、残念ながら、反応はほとんど進行しなかった。それに対し、市販のポリスチレン担持ホスフィンを用いた場合には、立体反転を伴ったアセチル化が進行することがわかった。これにより、反応の後処理が容易な反応系を構築することに成功した。
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