| 研究概要 |
本年度は,主に以下の成果が得られた。
1.ヒドリド(ヒドロゲルミレン)錯体の反応性研究
今回新たに,タングステンのヒドリド(ヒドロゲルミレン)錯体は,そのケイ素類縁体とは異なり,イソシアナートやイソチオシアナート等のヘテロクムレンと容易に反応し,ヒドロゲルミル化生成物である新規な5員環骨格を持つ錯体を与えることを明らかにした。特に,イソチオシアナートとの反応では,反応中間体の単離にも成功し,反応メカニズムに関する知見,すなわち,速度論的には,反応基質のヘテロ原子とゲルミレン錯体のゲルマニウムとの親和性が反応経路を決める一番重要な因子であり,置換基間の立体障害がある場合には熱力学的に安定な生成物が最終的に得られることが分かった。
2.P,Nキレート配位子を持つシリレン錯体の合成研究
新しいP,N-二座キレート配位子を合成し,これを支持配位子とするイリジウムおよびロジウムの錯体の合成を行った。これらの錯体と種々の嵩高いアルキルヒドロシランやアリールヒドロジシランとの反応を検討し,幾つかのシリル錯体およびシリレン架橋錯体に加え,4-ジメチルアミノピリジンが配位したシリレンイリジウム錯体の合成に成功した。
3.ハロシリレン錯体の反応性研究
先に合成に成功したブロモシリレン白金錯体の反応性の研究の継続として,エチニル試薬やホスフィド試薬およびチオラート試薬との反応を検討した。その結果,チオラート試薬との反応において,ブロモ基がチオラート基に置換された新しいシリレン錯体の合成に成功した。
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