研究概要 |
以前より見出していた,クロム,モリブデン,およびタングステンのヘキサカルボニル錯体を触媒とするアミン-ボラン付加物の脱水素カップリング反応について,その適用範囲・反応条件などを詳細に検討し,この反応が広範な第2級アミンボランに適用可能であることを見出した。また第1級アミンボランを用いた場合には,けじめにアミノボランのポリマーが生じ,これがさらに脱水素を受けてボラジン誘導体へ変化することを見出した。また密度汎関数法を用いた理論計算によりボランの脱水素反応の機構を検討し.(i)この反応の触媒活性種が14電子種[M(CO)_4]であること,(ii)反応は,金属上における,アミンボランの段階的なNH結合およびBH結合の活性化を経由して起こることを明らかにした。さらに,反応系中に存在するボラッシグマ錯体の役割について検討し,この化学種が配位不飽和種M(CO)_5]のリザーバーとして機能しており,供給される[M(CO)_5]が不均化して触媒活性種[M(CO)_4]を与えることを明らかにした。以上のように,6族カルボニル錯体によるボランの脱水素カップリング反応について,実験および理論の両面から,総合的な知見を得ることができた。 続いてマンガン,クロム,バナジウムを中心金属とするハーフサンドイッチ型カルボニル錯体の触媒作用について検討し,これらの錯体もボランの脱水素カップリングに対して触媒作用を示すこと,反応系中にボランシグマ錯体が存在していることを見出した。ただし,その触媒活性は,ヘキサカルボニル型錯体に比較してやや低いものであった。
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