研究概要 |
d10電子配置をとる一価の銅、銀、金の多核錯体の結晶構造と発光挙動の相関に関して、結晶化学の見地から以下の研究成果を得た. 1.キュバン型構造を持つ,発光性ヨウ化銅(I)四核錯体結晶における発光挙動の圧力依存性の研究 (1)[Cu4I4L4](L=トリフェニルホスフィン)において、異なる発光色を示す単斜晶系(黄緑発光)および立方晶系(青緑発光)の二種類の多形結晶を見いだした.結晶構造解析により,発光挙動に関係する錯体分子の中心にあるCu4I4キュバン骨格の大きさが多形間で異なることを明らかにした. (2)多形結晶の大気圧~10GPaの発光色の圧力依存性に測定し,発光極大エネルギーが圧力上昇にともなって低下することを見いだした.このエネルギーシフトは、どちらの晶系の結晶においても顕著に見られ,昨年度の研究成果の発光の温度依存性とは異なる挙動を示すことを見いだした. (3)立方晶系の高圧粉末結晶構造解析を行った.その結果,4つの銅原子でつくるCu4四面体コアサイズが圧力によって大きく圧縮されることが明らかになった.金属多核錯体が固体状態で圧力により柔軟に変形し発光色を変化させる様子を初めて系統的に明らかにした. 2.ピリジンチオール誘導体架橋の銀(I)金(I)および,銅(I)金(I)混合六核錯体の合成,構造,発光特性に関する研究 (1)六核混合金属錯体[M4Au(Et-pyt)4X2](M=Ag,Cu;X=Cl,Br,I;Et-pyt=エチルピリジンチオール)を初めて合成し,その結晶構造を明らかにした.錯体分子中では六個の金属イオンが八面体型に集合し,Au原子は対対角の位置に存在することを示した. (2)錯体は固体状態で紫外線照射により橙黄色の発光を示す.その発光極大は単一で極大エネルギーはハロゲン原子(X)の種類にほとんど依存しないことが明らかになった. (3)発光過程には,4つの銀あるいは銅原子のからなるクラスター中心軌道の遷移が関与していることを明らかにした.
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