遷移金属錯体触媒の素反応過程には、(1) シスートランス異性化、(2) 置換基の転移(移動)、(3) 炭素-水素結合の活性化、そして(4)還元的脱離反応等様々な反応があるが、それらの反応研究には、系に適した最適なモデル錯体を合成し、研究が行われている。我々は、アリール置換ゲルマニウム白金(II)錯体を合成し、その研究を通して、アリール基、中でもトリル基の位置により、錯体の触媒反応の重要な反応(1)~(4)が起きる事を見いだし、報告した。その中でも常識的には起きないとされている、(4) トランス体からの還元的脱離が起きる実験事実を見いだし、その事実の確認と原因を研究した。低温での速度論研究により、トランス体から還元的脱離が起きる事を詳細に検討したが、再現性という面からはまだ十分ではなく、実験の再現性、スクランブル実験、併せて理論計算など多方面から検討を進めている。 常識に反するトランス錯体からの還元的脱離反応の2例目として、置換基がトリル基以外のアニシル某でも検計を行い、反応が起きる事を確認した。化合物の合成、X-線構造解析装置による分析、常法による反応解析の結果は全て常識を覆すトランス体からの還元的脱離が進行している事を支持する者であるが、生成物の更なる確認などをふくめた実験結果の再現性に務めている。 14族元素化合物を統一的に解釈する事が我々の大きな目標の一つである。その目標に向かい、ゲルマニウムと同族のケイ素化合物の合成、同定も行い、研究を進めているが、現時点では、シスートランス異性化が同様に起きる事を乱している。
|