研究概要 |
各種d10錯体のCD,CPLスペクトルの測定 一昨年、昨年と研究を行ってきたジホスフィンを含むパラジウム(0)や白金(0)錯体、そして不斉ジホスフィンを含む銅(I)錯体に加えて、交付申請書に記載した[Ag(duphos)_2]^+錯体のCDとCPLスペクトルを測定した。その結果ほとんどすべての錯体において吸収スペクトルの最低エネルギー領域でのCDスペクトルの符号と今回観測されたCPLスペクトルの符号が一致するのみならず、両者の不斉因子もほぼ一致するという結果が得られた。ただ、銅(I)錯体においてはCPLから得られた不斉因子がCDで観測される不斉因子に比べ半分程度の値であり、この結果は銅錯体において励起状態におけるゆがみが大きいことを示していると思われた。なお、銀錯体は光分解しやすいためにCPLの測定が困難であったが、一対のエナンチオマーにおいて鏡像的なCPLシグナルを初めて得た。 時間依存密度汎関数計算によるCDスペクトルの予測 上記の銅(I)、パラジウム錯体(I)について時間依存密度汎関数計算を行ったところ、吸収スペクトルのみならず、CDスペクトルの符号も再現できることが分かった。d10遷移金属錯体のCDスペクトルの予測を計算により行う研究はほとんど行われておらず、実測を良く再現する結果は学会でも驚きを持って迎えられた。 単座ホスフィン錯体の発光 本研究で用いた錯体の原料錯体として使用した錯体([Pd(P(o-tol)_3)_2])が固体状態で強い青色発光を示すことを見いだし、関連する単座ボスフィン錯体の発光について研究を行った。その結果配位子の種類によって青色~赤色までの多くの発光色を示すことを見いだした。
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